待ち合わせ場所に現れた彼女は、サーキットで見る時とはまるで違っていた。
淡いピンクのニットに白いミニスカート。夜風に揺れるショートヘア。そして、あの優しい笑顔。
「待った?」
その一言だけで、今日は特別な夜になると確信した。
並んで歩くたび、ふわっと甘い香水が香る。撮影会ではいつも人に囲まれていて、遠い存在だった彼女。
でも今夜は違う。独り占め。
すぐ隣にいて、時々こちらを見上げて笑ってくれる。
「なんか変な感じ。カメラ越しじゃないんだもん」
そう言って照れ笑いする姿が可愛すぎて、思わずドキッとし、うまく会話を返すことが出来なかった。


夜の街を少し歩いたあと、二人はラブホテルへ入って行った。
エレベーターの中は妙に静かで、お互い少し緊張しているのが分かる。気まずくて、その気まずさを打開しようとすると、ますます気まずくなる。気まずさスパイラル。
部屋に入ると、彼女はバッグをソファに置いて、小さく息を吐いた。
「今日はいっぱい歩いたなぁ」
その仕草さえ色っぽい。
彼女はクスッと笑ってから、こちらを見つめる。
「……シャワー浴びてくるね。汗かいちゃって、身体ベタベタ。」
バスルームの扉が閉まる音。
その間、部屋に残された静けさが逆に落ち着かない。心臓の音が聞こえるほどドキドキしている。この後、俺は彼女と…
どこから攻めようか、どんなプレイしようか、妄想だけで逝ってしまいそう。
しばらくして、再びドアが開いた。
「お待たせ」
白いタオルを身体に巻いた彼女が、少し恥ずかしそうに立っていた。


濡れた髪。火照った肌。湯上がりでほんのり赤くなった頬。
サーキットで見せる完璧な笑顔より、今の無防備な表情のほうがずっと破壊力がある。
「恥ずかしいから、そんなに見ないで……」
そう言いながらも、彼女は少しだけ甘えるように近づいてくる。
近くに来た瞬間、シャンプーの甘い香りがふわっと広がった。
タオルの端を指でぎゅっと押さえる仕草が妙に可愛い。
「今日さ……実は私も、ちょっと楽しみにしてたんだ」
上目遣いでそう囁かれて、理性が危うくなる。我慢できん。
彼女はベッドの端に腰掛け、いたずらっぽく笑った。
「撮影会の時、ずっと優しかったから。今夜も優しくしてね」
サーキットでは見せない距離感。見せない表情。そして今、自分だけに向けられる視線。
“レースクイーン”という憧れの存在だった彼女が、今夜だけは一人の大人の女性として目の前にいる。
暖色の照明の中で微笑む彼女は、どんなレース会場よりも眩しく見えた。
「恥ずかしいから、明かりは暗くしてっ」そう言う彼女の言葉も聞かず、俺は…